amemo実験室 ~人生のボーナスステージ~

マズローの欲求五段階説。最上位にある自己実現欲求のさらに上位に、利他欲があるのではないか。そのあたりをドローンとかで遊びながら考えてみる。

初めての婚活がハーレムだと思ったらバトルロワイヤルだった件【後編】

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~前回までまでのあらすじ~
婚活パーティーのイロイロを検証する
という名目で女性に人気のパーティに参加しようするジョシュ。
パーティー詳細のページには女性5名増枠の文字が!
期待を胸に辿り着いた会場で目にしたのはハーレムだった・・・のか。

 

~前回までのあらすじはこちら~

amemolabo.hatenablog.com

 

 

 受付にて 

 

「ハァハァハァ」
 
一瞬彼女と目があった気がした。 
 
「こんにちはぁ
こちらで受付をどうぞ」
 
20代前半だろうか、淡いピングのカーディガンがよく似合う小柄な女性が受付をしてくれた。
心拍数はまだ高い。深く息を吸い込み、ゆっくりとまわりを見渡してみた。
 
 
 
ドックン
 
 
 
 
胸が鳴るのが分かった。
 
 
 
 
 
ドク、ドク、ドク、ドク・・・・・
 
 
 
 
 
 
落ち着け。
 
ペンを握った手が震えている。
 
 
 
 
 
ちょっと待て、、、、、
 
 
 
 
 
話が違うんじゃないか。
歯を食いしばった顔が赤くなる。
 
 
 
 
 
 
 
「大好評につき女性5名増員」
って書いてあっただろ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

アッ、圧倒的に女子が少ないやないかァァァァァ⁉
 
 
 
 
 
 
ちゃぶ台だ!
 
 
 
 
 
ちゃぶ台を出せ!
 
 
 
 
 
(ノ`△´)ノ~┻━┻
ウォリヤーーーーー!
 
 
 
 
ドシャン
 
 
 
 
ふぅ・・・・
落ちつけ、ここで取り乱せば全てが水の泡だ。
逆に考えろ、量より質だ。低質な僕がいうのもなんだが、やっぱり量より質だ。
 
 

 着席

 
会場には2つ1組の椅子が7組、円形に置かれている。
そこには青とピンクのプロフィールカードが一枚ずつ添えられていた。
男女ペアか・・・
いきなり男女が隣同士か・・・
 
 
素性も知らぬ、赤の他人が隣に座るだと。
しかも異性が!
なんとハレンチな・・・
 
 
 
 プロフィールカードを手に取り腰かける。
好きな食べ物
 
 
「アヒージョ」
 
 
 
とりあえずお洒落っぽいことを書いてみる。

 
 
聞いてほしい事
 
 
「年収」
 
 
フフフ。。。去年はビットコインでひと儲けしたからな。
どんどん聞いてこい!
 
 
 
 ぐるっとまわりを見渡してみる。
 しかし部屋が狭い。
逆に、それぞれの参加者の距離が近い。
彼らの見た目からある程度のことは推測がついた。

 

 

 参加者たち

 

 ふむふむ・・・

ここで参加者情報を整理しておきたい。


まずは男性陣


エントリー№1
エンジニア 

「じみお」

 

エントリ№2
好青年サラリーマン 

「草太」

 

エントリー№3
クリーニング屋

「けんちゃん」

 

エントリー№4
妖怪人間

「ジョシュ」

 

続いて女性陣
エントリー№11
歯科助手
「サオリ」

 

エントリー№12
OL一年生
「ゆみ」

 

そして受付をしていた司会者の「セツ子」

以上7名だ。


えっ!?

 

 

以上7名だ!

 

 

 どうだ!ビビっただろう!

いやーほんと、

これには僕もビビりましたよ。

 

 

 

10対15だと思ってたのに・・・

 

 

 パーティの始まり

 

「みなさま、こんばんは」

セツ子が司会を始める。

 

「まだ到着されていない方がいるようですが、時間となりましたのでパーティを始めさせていただきます。」

 

プロフィールカード記入から着席まですでに10分は経過している。

セツ子、なんでそんな嘘を付くんだい。

 

分かっている、もう誰も来ないことは。

そして、これがバトルロワイアルの始まりだということは。

 

 

男4人に対して女2人。

 

合コンよりヒドイ。

 

僕の横には、歯科助手の「サオリ」が座っている。

始まる前に、セツ子がサオリに席の移動をお願いしたのだ。

近い・・・

 

太股が触れ合っている。

サオリの体温が伝わってくる。

温かい・・・

何年振りだろうか、女性の体に触れるのは。

 

ムク、ムクムクムク

 

なんだコレは。

 

 

ヤバイ

 

 

ドキドキしてきた・・・

 

 

 

 個別トークタイム

 

「それでは個別トークタイム開始です」 

 

こんにちは、サオリって言います。

ジョシュです。お互いのプロフィールカードを交換した。

趣味は映画、休みの日は家でのんびりしています。

サオリは平凡な女だったが、とても聞き上手だった。

 

ええー登山するんですかぁ。

あぁ、するよ。北は韓国岳、南は高千穂の峰までね。

えぇすごーい。

サオリにはギャグが通じなかった。

結局、個別トークタイムの3分間、

ほとんどが山の噴火についての話になってしまった。

 

 

「それでは男性は席を変わって下さい」

 

 

男性は時計回りに、席を移動する。

となりに誰もいない椅子に腰かける。

男性4人に女性が2人しかいないのだ。

 

必然、男性には一人の時間が発生する。

クリーニング屋のけんちゃんが座っていたからか、

椅子が生暖かい。

 

 

僕が座っていたサオリの隣には、好青年の草太が座っている。

 

 

 

「個別トークタイム開始です」

 

 

 

独りだ。

となりには誰もいない。

一組の椅子を挟んで

右の方では、草太とサオリが、

左の方では、けんちゃんとゆみが楽しそうに話している。

自分のプロフィールカードを握りしめ順番を待つ。

 

ふと前方に目をやると、じみおさんも一人で座っていた。

年季の入ったジャケットが彼の性格を表している。

 

仕事場とアパートを往復するだけの毎日。

35年間彼女がいたことはない。

女性と触れ合う機会といえば、

近所のコンビニでバイトの子からたばこを買う時くらいだ。

たぶん、じみおさんはそんな人だろう。

 

彼は身じろぎひとつせず、ただただ虚空を見つめていた。

きっと、じみおさんもハーレムだと思っていたに違いない。

 

 

期待と裏切り。妄想と現実。

 

 

じみおさんから伝わってくる喪失感がハンパない。。。

その姿からは完全に魂が抜けていた。

 

 

だめだよ じみおさん! そっちは三途の川だよ!

 

 

婚活パーティーでの一人の時間というものは、想像以上に惨めなものだ。

何をすればいいのか分からない。

いや、することが無いのだ。

もはや精神修業の域だ。

 

「えぇーそうなんだおぁ面白ーい!」

草太とサオリの会話が盛り上がっているのがわかる。

楽しそうな二人の笑顔を横目にすると、

フツフツと悔しさがこみ上げてくる。

 

 

くそっ!火山灰の話なんかどうでもよかったのに!

 

 

 

 左をみれば、けんちゃんが巧みな話術でゆみを笑わせている。

どう見てもジミオさんと僕が蚊帳の外だ。

 

 

マズイ・・・

非常にマズイ・・・

考えろ・・・

何か手はないか・・・

実家の母ちゃんが朗報を待っているんだ。

ここで引き下がるわけにはいかない。

 

 

・・・!?

 

その時、自分でも信じられないくらいの名案が頭に浮かんだ。

 

セツ子・・・

 

そうだ、女性は二人じゃない!司会者のセツ子がいる。

コンマ一秒の迷いもなく、セツ子の方に視線を送る。

 

視線に気づいたセツ子が顔をあげる。

 

 

パチ(^_-)-☆

 

 

ウインクを送る。

 

 

「えっ」

セツ子の顔が一瞬とまどう。

しかし、すぐに笑顔に変わった。

 

 

よしキタ!

 

 

 こっちへ来てと手招きをしようとすると、

「隣に誰もいない方は、次の女性と話す準備をしていてください」

 

 

だめぇ?

だめなのぉ?

ねぇ、ちょっとでいいからぁ。

 

  

幼顔のセツ子は、司会者としてベテランだった。

 

  

セツ子の言う通りかもしれない。

次の相手は ゆみだ。

ゆるやかにウェーブした黒髪、

ふっくらとしたマシュマロのような頬は

わずかに桃色にそまっていた。

 

完全にどストライクだ。

本当は決めていた。

この部屋に入った時からね。 

 

「個別トークタイム終了です。

男性は席を変わって下さい。」

 

ゆみの隣に座ると、かすかに石鹸の香りがした。

始まりの合図を待たずに、僕はゆみとプロフィールカードを交換した。

ゆみは子供が好きだと言った。

僕も子供が好きだった。

僕のたわいのない話にゆみはよく笑った。

 

合う。

この子と合う!

運命と言ってもいいかもしれない。

そう思った。

彼女と僕は考え方も趣味も共通点が多かった。

 

 

 ドキドキのフリータイム

 

「さてみなさまお待たせしました、フリータイムの時間です」

セツ子の明るい司会が場を和ませてくれる。

 

 

「と、行きたいところなのですが、

今回は参加者が少ないため

もう一度個別トークタイムを行います。」 

 

 

はっ?

 

 

えっまじで?

 

 

まぁ女2人に男4人が群がる姿は見たくないもんな。。。

 

 

 
 

そして告白タイムへ

 

「告白カードに、気になるお相手の番号を記入してください」

もちろん決まっている。

12番だ。

 

 

 

チラッと、ゆみの方をみる。

 

草太の横に座った

ゆみもチラリとこっちをみる。

 

えッ!?

 

 

目が合った!

 

 

ドクン!

ドク・ドク・ドク・・・

 

 

胸の鼓動が早くなる。

 

 

間違いない!

いける!

 

 

けんちゃんがこっちを見ていた。

 

好青年の草太はドギマギしながら告白カードを書いている。

 

そして、じみおさんは虚空を見つめていた。

 

 

告白カードに、ゆみの番号12を書く。

一応第2希望の欄に、サオリの番号も書いておく。

 

 

「それでは告白カードを回収します」

 

 

セツ子が会場をぐるりとまわる。

裏返しにした告白カードを渡した。

僕には脳裏に焼き付いて離れない言葉があった。

 

 

”えっとぉ、ジョシュさん何番でしたっけ?”

 

 

トークタイム終了間際、

確かにゆみは僕の番号を聞いたのだ。

 

 

 

「皆様、集計の結果がでましたのでご報告します。」

 

 

 「カップルになられた場合は、玄関にて男性が女性をお待ちになり、お食事やお茶などお互いの距離を縮めてください。」

 

 

「それでは発表します!」

 

 

 

「今回のカップル成立者は!」

 

 

 

 

ドクン!

 

 

ドク・ドク・ドク・ドク・・・

 

 

 

 

 

「いませんでした。」

 

 

 

 

 

 

あっれーー

 

 

 

 

「それでは、男性のみなさんから退室してください。」

 

 

 

はやっ!

ちょっと落ち込む間もないな。

 

 

 謎の会合

 

荷物を取り、ぞろぞろと部屋を出ていく。

なんと惨めな姿なのだろう。

三人が階段を降りていく。

 

 

カタンカタンカタン

足取りが重い。

どうしても、ゆみを諦めきれなかった。

 

 

ん?

 

 

今会場には女性三人だけだぞ・・・

 

 

 

チャンスじゃないか・・・

 

 

 

チャンスだろ!

 

 

 

帰るふりをして、階段をかけあがった。

扉の向こうに女性の声が聞こえる。

 

 

 

「ごめんねぇ男が少なくてぇ」

 

 

 

・・・!?

 

 

 

セツ子が親しげに二人に話しかけている。

 

 

あれ?

どういうことだ!?

 

 

あまりに仲良く話していたので、思わず廊下で立ち往生してしまった。

 

 

司会者のセツ子と二人はどいう仲なんだ?

 

三人の会話はその後も数分間続いた。

 

 

 

 

 

あぁ、そういうことか・・・

 

 

 

 

天井を見上げ、会場を背にそっと階段を降りた。

掴んだ手すりが

やけに冷たく感じる夜だった。

 

 

 

婚活って厳しいな・・・

 

  

 

 おわり。

 

 少子化止めませんか?